購買コンサルティング

『価格』の仕組みを理解する。 商社適正化のすゝめ②『商社マージン(利益)適正化』

Dr. Trade
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こんにちは、商社出身貿易ドクターです!本日は値段の決まり方に関して説明するよ!これ迄説明してきた貿易実務や貿易取引をフル活用しながら調達活動に結び付けていこう!実務に勝る知識はなし!

本日の記事の内容
  • 価格はどうやって決まるのか。
  • 『知らない』を減らす事が最大のコストカット
  • 商社マージン(利益)適正化のすゝめ

 

価格はどうやって決まるのか

調達活動の最も直線的かつ重要活動の一つとしてコスト削減があります。コスト削減と言えば、勿論自社の購入価格を下げる事!今日はその中でも最もメスが入りやすい商社マージンについて、損をしない削減の仕方について説明していきます。

ところで、その削減したい『価格』とは一体どうやって決まるのか、まずはそれを知る所から始めましょう。

例え話になりますが、街角のコーラで考えてみましょう。我々の私生活で存在する商品全てに相場と言うものが存在します。コンビニにいけばコーラ1本=約150円と言った『このくらいでしょう』と言うものですね。このコーラの値段をざっくり分解すると下記になります。

コーラの値段=製品代(コーラ)+物流費用+小売業者の利益+消費税

そしてこの、コーラの値段は需要と供給のバランスによって最終価格が決定されます。世の中にコーラが1本しかなければ取り合いになって高価になるでしょうし、世の中にコーラが有り余ってどうしようもない状態であれば1本50円にしないと売れなくなってしまうでしょう。その様な特殊な需給バランスの変化がない中で仮に近くのコンビニでコーラが一本400円だとすると、誰も買いません。これは、コーラの値段が約150円くらいであろうと言う相場感を我々が知ってるからです。これを上記のブロック内のメッセージに書き換えると、製品代・物流費用・小売業者の利益・消費税を我々がなんとなくイメージできてると言うことになります。

ここで不思議な事が起こります。この話がコーラではなく、アルゼンチンで生産されるジシアンジアミドが400円/kgならばいかがでしょうか?

はたまた、英国の訴訟問題に対応すべく英国在住の弁護士を雇った時の費用が600EURO/時間であればどうでしょうか?

恐らく、フリーズしますよね。笑 そして値段交渉した結果、ジシアンジアミドが320円/kgに、弁護士費用が500EURO/時間になれば、うまく買い物ができたと思ってしまいます。なぜか、何も、知らないからです。

何が言いたいかというと、知らない=値段がついてしまうという事です。知らない物事に関して、我々はその価格が高いのか安いのかを判断する事ができません。その結果、知らないものに関しては割高で買わされてしまいます。つまり、世の中の購入価格を分解した場合の本当の定義は下記になります。

『知らない』を減らす事が最大のコストカット

上記価格の仕組みを理解して初めて、調達価格を下げる為にはどうすればいいか?という問いに正しく向き合う事が可能です。即効性のあるコストカットとは、この知らないをいかに減らすかに焦点を当てるべきなのです。

  1. 製品代
  2. 物流
  3. 諸税
  4. 商社口銭

このそれぞれの項目に+αで知らない代が価格に乗ってくる為、知れば知るほど自身の判断軸が鋭くなり、結果としてトータルのコストが下がります。それでは一つずつ説明していきましょう。

①製品代

商社から購入する際、仕入値を聞くのはマナーとしても聞き辛いですよね。但し、全く何も知らないのと、それとなく仕入れ値のイメージを持ってるのでは商社に対する交渉力が変わります。

②物流

仮にある商社から原料Aを輸入してると仮定しましょう。物流というのは製品が発送されてから納入までの運賃を表します。そして最も楽な購入方法は商社からDDPの日本円(工場納入まで全部商社が手配)で購入する事です。でも、これが最も危険!

商社の経験則からするとDDPを依頼する方のほとんどが、面倒臭いから、や輸入作業がよく分からないからです。作業は面倒臭くても、その作業に掛かる費用相場は乙仲やフォワーダーに確認すればすぐわかりますので理解した上で商社に依頼すべきです。アマゾンや楽天では物流費用が500円掛かるだけで議論がなされてますが、化学品販売の場合、港からお客様の工場までトラック1台10万円なのに、15万円で請求しても何の違和感も持たれないケースがほとんどです。この5万円無駄な費用になってますね。

再度、物流とはどの様な項目があるかについては前回記事↓↓ご参照ください。

商社は必要?不必要?商社適正化のすゝめ①『商社機能とは』

仕入から納入までに海上運賃・保険・通関費用・関税・国内運賃があります。この費用をまるっと含めて商社から請求を受けるのですが、その費用が適正なのかどうかを見る目は持っておかないと各項目で少しづつ高い値段設定での請求を受けてしまい結果として不必要な費用を払ってるケースも少なくありません。

③諸税

上記物流に関連しますが、商社の中には、輸入関税は経済協定により本当は無税なのに、一般税率を提示して顧客から多めにもらうケースがあります。先程の物流条件でDDPを依頼されるお客様の大半が関税に関する知識をお持ちでないので、請求書に○%と記載されても違和感が出ません。これも知っていれば防げるコストですし、関税に関しては決して難しくありません。関税の調べ方に関してはこちら↓↓をご参照ください。

徹底解説!『関税』×『HSCODE』×『調べ方』これで関税のプロに?!

④商社口銭

商社口銭に関しても一般的な相場があります。日本では○%ね、と指定してしまう傾向が強いですね。機能別に纏めてみましたのでご参照下さい。

商社機能 情報 2%-3%
商社機能 リスクテイカー 与信機能 3%-5%
  リスクテイカー 在庫機能 5%-10%
  リスクテイカー 物流機能 3%-5%
商社機能 手間を請け負う 2%-3%
商社機能 個人的提案力 2%-3%
商社機能別 口銭相場(筆写作成)

こちらも一つ一つの内容理解に関しては前回記事ご参照下さい。

https://bouekidoctor.com/archives/285

ここでもまずは現在起用してる商社がどの機能を提供してくれているかを棚卸しする事で初めてその提供サービス対し適正な口銭を払っているかどうかの判断ができる様になります。

商社マージン(利益)適正化のすゝめ

これ迄『商社口銭』と記載してきましたが、ここでは『商社マージン(利益)』と記載させていただきます。違いは商社マージンは冒頭に戻りますが、商社口銭+知らない代=商社マージンであるという事で、これを適正化すべきだという事になります。実際の見積書と貿易ドクター分析後の見積書を下記ご参照下さい。

【一般的見積書一例】

【商社口銭+知らない代に分解】

Dr. Trade
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と、なると商社口銭3%に対し、仕上がり的には4.8%になるね!貿易ドクター的にはこの4.8%-3%=1.8%が削除すべきコストの位置付けになるんだよ。

この仕組みを理解せず、ただただ、商社口銭を下げ様とする方々結構多いのですが、商社口銭はサービスに対する対価ですので、ここの削除はサービスの低下を引き起こす可能性があることに注意です。つまり商社マージン(利益)の適正化とは知らない代をどこ迄削るかに着眼点を置いてみるという考え方です。

商社マージン適正化のすゝめ
  • 口銭は削らない。適正かどうかの確認を。
  • 物流代は『どこ迄を委託するか』の意識を持とう。
  • 仕入から納入までフローと相場を理解する事。

 

大手化学メーカーさんの調達ですと、輸入原料はCFRで購入される方がほとんどです。これは関税部分・国内物流部分は自社で知ってますので、商社にお願いしなくても大丈夫ですよというメッセージでもあります。それでもまだ金利・為替についての詳細は知られない方多いのではないでしょうか。『メガバングの短期プライムレート適用』などの説明で納得されるケースも多いと思います。

こんなケースは稀だ !!というお声を頂くこともありますが、もしお時間があれば、商社の決算書を見るとよくわかります。売総率は7-10%がほとんどです。つまり口銭以上に利益が出る商いが事実としてまだまだたくさん存在するという事になりますね。

購買として商社の利用価値を最大化する為に払うべき『対価』を理解し追加の『知らない代=コスト』を防ぐ事で上手に商社と付き合えるでしょう。その為には物流を得意とする彼らに対し、「この人よくわかってるいるな。適当なことできないな。』という牽制力を持つ事が重要です。繰り返しになりますが、その為には自社で使用する原料調達に関して物が出る所から輸入され、納入されるまでの貿易のフローをしっかりと理解していきましょう。筆者の経験則ではDDP販売というのは商社にとって最も利益率が高い商売です。ほとんどのお客様が海外取引はよく分からないので、工場渡しで提示してくれると助かるという話でしたが、やはり企業の競争力を上げていく為には払う必要のないものはなるべく削っていきましょう。良い例としてTOYOTA社は車の部品製造から組み立て、完成車まで全て自社でできる技術がありますが、手間とコストの関係からあえて外出しにしております。つまり彼らがなぜ強いかというといくらで製造ができるのかを自社で理解している為、知らない代が0ですし、必要な対価(必要最低限の利益)はきっちりと支払うので、何も言い返すことができません。その為に、TOYOTAは世間で非難を浴びるほど、原料メーカーに対し値下げを強く要求します。これは全てをわかった上であえて依頼する、知らないの真逆の良い例です。購買と商社の関係もこの様に成れることを目指していきましょう。

 

それではまた。