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Starbucks・KFC 今年の目玉商品『植物肉』!!世界的ブームを作る植物肉/サプライチェーンの裏側に着目

Dr. Trade
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こんにちは、商社出身貿易ドクターです!本日はBeyond Meatでも話題の健康食品『植物肉』に関して化学業界的視点でその世界動向・裏側に着目するよ!

本日の記事の内容
  • Starbucksの新商品『植物肉』食べてみました!
  • 植物肉って何?
  • 注目原料*エンドウ豆タンパク*
  • エンドウ豆のサプライチェーン
  • 中国が動き出した!Keyは『春雨』!業界の巨象双塔グループの躍進

 

Starbucksの新商品『植物肉』食べてみました!

ケミカル業界配信なのに、どうしたの。。。。。と思われるかも知れません(笑)が、今話題の植物肉はケミカル業界と非常に密接に結びついておりますので最後までお付き合い頂ければ嬉しく思います!まずはそんな硬い事よりも100聞は1見にしかずとう事で、中国のStarbucksで早速新商品を購入、実食してみました。(尚、後段で解説きっちりと致しますのでしばし食レポの様な記事になってしまう事、大変申し訳ございません。)

とある中国のStarbucksにて。。。

左図:别样牛肉は『牛肉もどきではない!!』の意味です。笑

訳わからない中国語が記載されてますが、左側はツイスター的なやつで、右側はラザニアになります。别样牛肉と記載されてますが、『牛肉もどきではない!!』の意味で、肉っぽさがちゃんとあるぞというアピールですね。笑

100%高タンパクの植物肉を使用しておりますという内容です。0反式脂肪酸はトランス脂肪酸フリーという意味になります。

見かけは肉というよりソーセージとかハンバーグに近いですね!

 

このツイスターとラザニアで約140元(2200円)です。相変わらずStarbucksのブランド戦略には頭が上がりません。食べて見ましたが、味は、、、、、これまたソーセージ食べてる様な食感です。何も言われず出されたら普通に肉が入ってると思ってしまいます!味付けも美味しい!!

これ以上は本当に食レポになってしまいますので、趣旨を一旦戻して植物肉にフォーカスしましょう。今年に始まったわけではないのですが、植物肉はここ近年ブームになりつつあり、今回のStarbucksだけでなくKFCでも商品化が決まっている流行り物になります。↓↓下記植物肉記事ご参照。

スタバ、KFCが「人工肉」セット発売、関連株が相次ぎ上昇 中国

植物肉って何?

さて、この植物肉って何?どうやってできてるの?という事ですが、植物肉とは植物タンパク質や細胞培養技術によって製造されます。その植物タンパク質の原料となるのは主に大豆が一般的です。身近なところではソイプロテイン(英語でタンパクはProtein)が有名ですね。念のためWikiでも見て見ましょう。

 

植物肉とは、大豆やこんにゃくなどの植物原料や細胞培養技術によって作る人工肉を指します。最近では味や食感が肉にかなり近く、美味しい商品も開発されており、世界的に市場が拡大中。日本でも丸大食品や伊藤ハムなど様々な大手企業が商品開発を進めており、市場の拡大が予想されています。

 

引用元:https://arvo.showcase-tv.com/128304/#:~:text=%E6%A4%8D%E7%89%A9%E8%82%89%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E5%A4%A7%E8%B1%86,%E3%81%8C%E4%BA%88%E6%83%B3%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
 

歴史的には1980年代から欧米を中心に研究開発が始まりヴィーガンや健康志向の人向けでの製品開発が進んできました。 技術の進歩が進むにつれ従来課題とされていた肉本来の食感・風味に近しい形の製品が開発され欧米で先行する形で産業が形成されてきました。今では外食大手チェーンであるデニーズダンキンドーナッツ、バーガーキングでも取り扱いが始まり各スーパーでも食肉コーナーと並列して植物肉の販売がされる程の一大市場になったと言えます。あまりこう言った科学的な合成により生み出した食べ物を好まない日本人にとっては植物肉というのは馴染みがないかもしれませんが、人工肉(植物肉)の市場は既に確立されております。

世界市場規模の推移・予測は下記ご参照↓↓

引用元;https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000035568.html

まだ世界市場1200億円程の規模ですが毎年右方上がりの急成長市場と言われております。それは植物肉の普及を通して国際的課題とされる下記3つの課題解決に繋がるという背景に支えられております。

植物肉が解決する国際課題

①環境問題(家畜では大量に水が使用される)
②動物愛護の観点(動物殺傷に関する倫理)
③健康意識
(肥満人数増大)

そしてこの、火付け役となってる企業がよくニュースにもなっております、『Beyond Meat』と『Impossible Foods』ですね。冒頭で説明のStarbucksに植物肉を供給したのは『Beyond Meat』になります。米国株式業界でもその急成長具合で有名になってる企業ですよね。さっとWikipediaで会社概要見ていきましょう!

◆Beyond meat(米)

ビヨンド・ミート(英語: Beyond Meat)は、カリフォルニア州エル・セグンドに本部を置く植物由来の人工肉を製造・開発するアメリカ合衆国の食品テクノロジー企業。2013年より全米のホールフーズ・マーケットで販売されている。

wikipediaより
引用元:https://www.beyondmeat.com/

◆Impossible Foods(米)

インポッシブル・フーズ(英語: Impossible Foods)は、カリフォルニア州レッドウッドシティに本部を置く植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発するアメリカ合衆国の食品テクノロジー企業。アメリカと香港の1000以上のレストランで同社の人工肉を使用した「インポッシブル・バーガー」を提供している。

 

Wikipediaより
引用元:https://impossiblefoods.com/

どちらもビルゲイツやグーグルベンチャーズなどから巨額投資を受ける将来有望とされるFoodテック企業になり食品業界だけでなく、株式市場からも注目を受ける米国スタートアップ企業です。

注目原料*エンドウ豆タンパク

さて、こっからが本題です。貿易ドクターの生い立ちは『化学商社』ですのでこの植物肉のブームに伴い、そこに関わるサプライチェーン(原料や原料供給の仕組み)の変化を説明していきたいと思います。

Dr. Trade
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化学の世界はみんなの目に映るコンシューマー製品の一つ川上に存在するからスタバとかKFCと違って目立たないんだけど、この一つ裏側では激動が起こってるんだよね〜

 

上述で記載した通り、植物肉の原料として最も主流なのは大豆です。『ソイプロテイン』を好んで飲む?食されている方も多いのではないでしょうか。大豆にはタンパク質やビタミン、カルシウムが豊富に含まれており『畑の肉』と言われております。従来ではこの大豆タンパクをベースとして各種添加剤を投入・合成する事で限りなく肉に近い製品が開発されてきました。そんな主流の大豆ですが、GMO(遺伝子組み換え)による人体リスクへの懸念が高い事やアレルギーを誘発するアレルゲンを多く含む事からもここ2−3年ではNon-GMO(非遺伝子組み換え)製品・アレルゲンが少なく高タンパク(80%以上プロテイン含有)・様々なアミノ酸を含むエンドウ豆タンパク(通称:ピープロテイン)が業界で注目を浴び始めております。特に植物肉の原料としてBeyond Meat社がエンドウ豆タンパクを積極的に採用し始めた事からエンドウ豆タンパクの人気が急上昇しております。

大豆→エンドウ豆へのシフトが起こっている分かりやすい記事がありましたのでご興味ある方は↓↓下記ご参照ください!!

えんどう豆プロテインが注目される理由とは?

さてこのエンドウ豆タンパク質ですが当然の事ながらエンドウ豆から取れます。エンドウ豆と言っても大きく分けると2種類あってエンドウ豆タンパクは乾燥黄エンドウ豆から抽出されます。

Dr. Trade
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一般に食卓で馴染みがあるのは殻が柔らかい、軟莢種というもので実は若干違うんだよね

←ご参考)黄エンドウ

エンドウ豆タンパク特徴

  • 低アレルゲン
  • 高タンパク
  • グルテンフリー
  • 鉄分、アルギニン、分岐鎖アミノ酸(BCAA)含有

エンドウ豆のサプライチェーン

この黄エンドウ豆の世界に於ける主要産地は気候・土地柄からカナダが圧倒的なシェアを持っております。下記世界の輸出通関統計ですが、世界Top10を並べてみましたが一目瞭然ですね。そして健康食品の最先端は常に欧米が発祥という事もあり、黄エンドウ豆のエンドウタンパク質を欲しがる企業も欧米が中心となって栄えて来ました。

通関統計データより筆者作成
 

黄エンドウ豆はカナダが一強の生産地

ここまでの説明ですと大豆よりもメリットが大きいエンドウ豆タンパクの方がもとより主流であってもいいのでは?と思うかも知れません。すでにこの手の健康食品がお好きな方はご存知かも知れませんがエンドウ豆タンパクは大豆より高価なのです。この大豆との価格の差が結果として普及の速度の差をうみました。

エンドウ豆タンパクはなぜ高いのか?!

ここにも実は理由が存在します。大豆・エンドウ豆自体の値差も多少はありますが健康食品原料という川下製品でのインパクトはそれほどありません。一番の要因は実は大豆もエンドウ豆もタンパク質を抽出して販売するというのが主目的ではないところにあります。黄エンドウ豆であれば、主目的はエンドウ澱粉(デンプン)です。大豆は食用、大豆油・肥料・飼料、バイオディーゼルと用途が豊富です。澱粉といえば欧米では、お菓子・洋菓子によく使用されるコーンスターチ(コーン澱粉)が主流ですので、欧米ではそもそも黄エンドウ豆が流通していなかった。そんな矢先に人々の健康意識が向上するにつれエンドウ豆タンパクの魅力が注目を浴びるものの、エンドウ豆澱粉が売れないので、澱粉のコストを製品に載せないといけません。一方大豆はそもそも流通している製品ですので、すぐに調達が可能で、且つ新しい市場として付加価値をつけることが出来ると判断され迎合されました。この汎用性の差が植物タンパクのブーム到来時にコスト競争力の差と普及の差を産んだのです

 

黄エンドウ豆用途:えんどう澱粉

大豆用途:食用大豆・大豆油・肥料・飼料・バイオディーゼル

試しにプロテインとして、ピープロテインとソイプロテインで比較しても値段の差は一目瞭然ですね。因みに↓はピープロテイン600gに対しソイプロテインは1050g入ってますが、価格は逆転しております。

引用:Amazonより
引用;Amazonより

 

中国が動き出した!Keyは『春雨』!!業界の巨象双塔グループの躍進

この業界のサプライチェーンに改革を与えた国があります。そうです、中国です。冒頭説明で掲載したStarbucks、KFCは現在中国でエンドウ豆タンパク質を起用した植物肉のプロモーションに挙って力を入れております。なぜ、そんなことをするのか??その答えは中国の食文化に隠されております。

答えは『春雨』です。春雨の原料は澱粉です。そして春雨は主にジャガイモ・サツマイモ・エンドウ豆の澱粉から作られます。春雨の世界最大消費地はなんと言っても中国ですね。世界三大料理の一つ中華料理では古くから春雨を大量に使う食文化が根付いております。つまり中国は欧米とは逆で、春雨需要としてのエンドウ豆澱粉は古くから底堅く、一方でエンドウ豆タンパクと言ったヘルスケア領域への意識は低く需要はなかった為、タンパク分は全て動物の餌にしておりました。そう、ほぼ捨てていたも同様なのです。上記にて世界の乾燥エンドウ輸出出荷量を提示しましたが、世界の乾燥エンドウ輸入量を見て見ましょう。

通関データより筆者作成

見ての通り、圧倒的に中国ですね。この大半が春雨になります。これ迄ほぼ捨てるような価格で処理していたタンパク質が欧米を中心に高価に販売される。。。という事実を受け遂に中国が動き始めます。

中国最大春雨メーカー双塔グループの躍進

双塔グループは1992年に設立。中国最大春雨メーカーで春雨発祥地とされる山東省招遠市に本社を構え敷地面積70万平方メートル、年売上18億元(約300億円)の上場企業です。春雨製造を主要事業として運営していたものの、欧米発のエンドウ豆タンパク用途の可能性にいち早く気付きエンドウ澱粉製造時の廃液からタンパク質を抽出する技術を開発。今では売上の3割をエンドウタンパク事業で稼ぎ主軸の春雨事業を超えるほどになりました。

尚、同社は既にBeyond Meatにも供給を開始しており、既に世界の植物肉のエンドウ豆タンパク供給を担う一大企業になっております。『春雨』という食文化を持つ中国にとってエンドウ豆タンパクを製造する事は新たな付加価値に結びついており、且つ製造コストも澱粉が既に捌けている分、欧米の比ではありません。従来の欧米完結型では市場にマッチしなかった製品が、中国食文化と連動し、中国企業がサプライチェーンに参入する事で、市場に受け入れられる価格に変化し産業が発展。その結果StarbacksやKFCと言った我々がよく知る身の回りの製品として世の中に出てくる様になりました。

流行の『植物肉』特集でしたが如何でしたでしょうか。化学の目線から身近な製品のその背景に起きているグローバルなダイナミズムが少しでも伝わればと思います。そして直近の足元でもこのブームに少し遅れる形で日本市場でもエンドウ豆タンパク由来の植物肉は浸透し始めております。もしどこかで見た際には、カナダ・欧米・中国が複合的に関わって生まれたダイナミズムに想像を馳せて頂ければと思います!

 

それではまた。