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『実務編』インコタームズ徹底解説!商社・資材・化学品原料販売の方の為の使える貿易実務 !

Dr. Trade
Dr. Trade
こんにちは、商社出身貿易ドクターです!本日は”インコタームズ”に関して。沢山種類があってとっつきにくいなあ〜〜という人も多いかもしれませんが、実はとっても簡単でシンプル。実務で必要となるものだけ説明するね。
記事の目次
  • インコタームズって?
  • 内容は物流費用・保険・責任範囲の3点 
  • 3点を組み合わせるだけ
  • 4種類が基本 『Ex work、FOB、CFR/CIF、DAP/DDP』
  • 実務でのケース

インコタームズって?

いつもの通り、まずは一般的説明から見ていきましょう。お馴染みのJETROさんのHPに丁寧に説明されております。ん〜〜確かに完璧な説明で当方としては唸るのですが、わかりづらいですね。(笑)

インコタームズ(Incoterms)とは、1936年、国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則です。それ以前は、貿易取引条件の解釈がそれぞれの国で異なり、しばしばトラブルの原因となっていたため、これらの誤解や行きちがいを回避する目的で制定されました。商慣習の変化に伴って、数次の改訂が行われ、2020年1月1日発効の「インコタームズ2020」が最新版です。

引用元:Jetro公式HP https://www.jetro.go.jp/world/qa/J-200309.html 

これをもう少し噛み砕いて言うと、、、、、

インコタームズ=価格と責任範囲の詳細を明確化する為のお約束事。

つまり、ざっくりと、『価格』に関する話なのです。インコタームズと聞くと「わ!貿易実務だ!」とその詳細の内容を理解する事ばかりを追っかけがちですが、前回記載の貿易基本条件の『価格』の詳細に過ぎません。

では、なぜインコタームズが貿易には必要なのかというと、貿易の相手は海外の人達ですので、言語も文化も違う為、商習慣が異なります。そんな人達との共通認識を作り上げる為に国際商業会議所ICCが作ったお決まり事です。定期的に改訂されるのですが、大事なのは共通認識ですので、最新情報を把握する必要はありません。なぜならば、最新の軽微変更は共通認識されてないのです。(笑)

従い、基本的枠組みさえ理解すればインコタームズ2010・2020はどちらでも構わないというのが実務上での経験です。

内容は物流費用・保険・責任範囲の3点

価格の詳細を詰めるということは、一般消費者の買い物でいう「この値段は送料込みですか?それとも送料別ですか?」というのと似てます。一般消費者向けの場合はネット通販に代表される様に送料込みでも別でも費用だけの話ですね。基本的にはメーカーさんが物流を手配し、物を届けてくれますがBtoBの世界ではメーカーさんが全て物流手配まで行ってるとラチがあかないので、誰が手配するかまでを決め事として議論していきます。

そして誰が手配するかという議論上では、万が一商品輸送中に不測の事態が起き、その商品に何かしらの不備が発生した場合は、どうするのか?という議論が出ますよね。その不測の事態に備えるものが海上保険です。そして保険を掛かれば安心ですが、万が一の不測の事態発生後を想定しそもそも売主・買主のどちらに責任があるのかを決めておく事が責任範囲の議論に該当します。

例えば、皆さんが夕飯に使う食材をスーパーに買いに行ったとしましょう。スーパーで買いに行った後、帰宅途中で転けてしまい、卵を割ったとします。この場合だと自己責任という事で治めますよね。但し、これがAmazonで依頼した卵だとして、これが届いた時に割れていたら返品交換致しますよね。なぜならば前者では物流(スーパーから消費地としての家)の手配を自身が行い(徒歩というのも一つの物流)費用負担をしたのに対し、後者ではAmazonが物流を手配した為、責任はAmazonが取るべきということになります。

Dr. Trade
Dr. Trade
消費者の世界でも一緒だね。

此処までがインコタームズの基本概念になります。基本概念さえ抑えてしまえば、後はその詳細を見ていきましょう。

① 物流費用

物流費用はざっくり言うと、運賃(輸送に係るお金と港使用に伴う諸費用)と税金(関税)の2種類だけです。税金(関税)とは輸入製品に関わる税金で、国によって、また、製品によって各国政府が定めております。

Dr. Trade
Dr. Trade
関税といえば、最近流行のトランプ大統領が貿易戦争を引き起こしてるけど、これは中国から輸入する製品には25%の関税を支払いなさいと米国企業に対し課してるもの。結果としてそんな高い税金払えないから誰も中国から買えないという事になるんだよね。末恐ろしい。。。。

下記の1〜4と6が運賃、5が関税。こう考えればイメージ付きやすいですよね。

物流費用(輸入想定)

① 海外国内運賃   (海外工場→港)

② 輸出港での諸費用 (輸出時に発生する諸々の手数料)

③ 海上運賃     (国→国)

④ 輸入港での諸費用  (輸入時に発生する諸々の手数料)

⑤ 輸入関税      (海外製品輸入時はお国に税金を払います!) 

⑥ 国内運賃     (港→工場)

② 保険

保険は下記3つに分類されますが、現在海上保険会社は①−③をパッケージングにして提供してくれてますので、貿易実務の中では分ける必要はなく、保険を自社がかけるor相手がかける、の2択だけの話と理解ください。

保険(輸入想定)

① 海外国内物流保険 (海外工場→港)

② 海上保険      (港→港)

③ 国内物流保険    (港→自社工場)

保険を自社で付保する必要がある方は下記ご参照。

海上保険会社

1. 三井住友海上保険

https://www.ms-ins.com

2.東京海上日動

https://www.ms-ins.com

③ 責任範囲

本当は細かく沢山あるのですが、正直実際の現場で起用されるのは下記のみです。ここで責任が移転しますよ〜ということを明確にするための地点の定義になります。

責任範囲(輸入想定)

① 海外工場時点 

(取りに来て!という事。)

② 海外港から出港した時点 

(船に積むまで面倒見ます!という事。)

③ 輸入港に到着した時点

(貨物が日本に到着するまで面倒見ます!という事。)

④ 工場納入時点

(貨物をあなた様の工場に納めるまで面倒見ます!という事)

3点を組み合わせるだけ

後はこの物流費用・保険・責任範囲を組み合わせて、どういう条件で取引しますか?といったものがインコタームズの実戦での適用になります。

指定仕向地=自社工場 危険負担=責任範囲 と読み解いて下さい。

引用元:三九株式会社公式HP https://webciss.sankyu.co.jp/portal/j/asp/newsitem.asp?nw_id=4239

どうでしょうか。まだ少しイメージつき難いかなって感じですかね?でもご安心ください。実際国際取引で起用されるのはこの中の幾つかになりますので、全部は本当に必要ありません。(笑)なぜかというと、冒頭に戻りますが、これは単なる価格条件の詳細に過ぎません。従い、皆様が分かり難いということは海外の人たちも分かり難いのです。よって、実際は分かりやすいものが主流になって起用されてます。

4種類が基本 『Ex work、FOB、CFR/CIF、DAP/DDP』

1)Ex work 日本語:工場渡し 

E系=Ex〇〇 (〇〇には場所が入ります)という表現が一般的でして日本語で指定倉庫渡しと言われます。つまり、売主が指定した(国内の)場所まで持っていきますよというもので、その指定先が〇〇に入ります。この代表格がExworkになります。Work=factoryでして、売主の倉庫まで持っていきますよ(いや、厳密には持ってきていないんだが笑)という事ですので買主に対し、貨物を工場まで取りに来て下さいという事です。 

物流費用保険責任範囲
運賃:出荷以降全て買主負担
関税:買主負担
買主が付保工場地点以降買主
Exworkでの条件
引用元:三九株式会社公式HP https://webciss.sankyu.co.jp/portal/j/asp/newsitem.asp?nw_id=4239

2)FOB 英語:Free On Board 日本語:本船渡し 

売主側の港の船上に乗った時点で責任が移転されます。つまり、船に乗せるまで(海外の港に貨物が付いて、積載されるまでは)メーカー側で責任取りますよ〜というものです。

物流費用保険責任範囲
運賃:海上輸送以降(海上輸送含む)買主負担
関税:買主負担
買主が付保船に積載以降買主
FOB取引
引用元:三九株式会社公式HP https://webciss.sankyu.co.jp/portal/j/asp/newsitem.asp?nw_id=4239

3)CFR 英語:Cost and Freight 日本語:運賃込み

  CIF 英語:Cost Insurance and Freight 日本語 : 運賃・保険料込み

二つの違いは文字通りで保険をつけてくれているかどうかだけです。

物流費用保険責任範囲
CFR運賃:輸入港到着以降買主負担
関税:買主負担
買主が付保船に積載以降買主
CIF運賃:輸入港到着以降買主負担
関税:買主負担
売主が付保船に積載以降買主
CFR/CIF取引
引用元:三九株式会社公式HP https://webciss.sankyu.co.jp/portal/j/asp/newsitem.asp?nw_id=4239

保険を付保するのが、買主であっても、売主であっても『付保するという作業』をどちらが担うかというのが、保険の協議であり、実際の責任範囲とは、ズレますのでご注意ください。

Dr. Trade
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ここが分かり難い所だよね。CFRだと保険は売主が保険を付けてあげるのだけれど、責任範囲は船に積むまでだから、仮に海上輸送中に貨物に何かあった場合は買主の責任範囲なんだよ。

4) DAP 英語:Delivered at Place 日本語:仕向地持込渡

  DDP 英語:Delivered Duty Paid 日本語 : 関税込持込渡

買主にとって非常に便利な条件がこのDタイプです。どちらも、自社工場まで物流を手配してくれます。つまり、待ってれば貨物が届くという事です。

物流費用保険責任範囲
DAP運賃:全て売主負担
関税:買主負担
売主付保工場納入時点迄売主
DDP運賃:全て売主負担
関税:売主負担
売主付保工場納入時点迄売主
DAP/DDP取引
引用元:三九株式会社公式HP https://webciss.sankyu.co.jp/portal/j/asp/newsitem.asp?nw_id=4239

DAPとDDP一見全て同じ様に見えますが、関税の支払いを誰がするのか、が異なります。

Dr. Trade
Dr. Trade
Amazonで商品買う場合は貿易実務でいうtころDDPと言えるね。水1ケース DDP500円と買いてくれたらいいのに。笑 消費者向けの通販は全てDDPと言える。

実務でのケース

それでは早速実務を解説していきましょう。

Doctor’s partner

Hi, we’re please to offer our MEK(Methyl Ethyl Ketone1) as followings.

Seller:※※company ltd.

Buyer:貿易ドクター

Product:MEK

Price:

①USD1.1/kg FOB Pusan

②USD1.4/kg CFR Kobe

③USD1.7/kg DDP your factory(address***********)

Packing:200kg net in drum/1FCL 16mt 80drum without pallet

Qty : 80mt 5FCL

Payment : TTR in advance

Validity:2020/05/10

価格の条件部分にインコタームズが出現しておりますね。これを買主目線で日本語で解説していきます.

Dr. Trade
Dr. Trade
①FOB1.1/kg Pusanはこのメーカは韓国の釜山港まで運んでくれてこの値段ってことだな。つまり自分で釜山から神戸港までの海上物流と港についてから当社工場までの物流手配・海上保険の手配が必要か。後、関税も払わないといけないね。
Dr. Trade
Dr. Trade
②USD1.4/kg CFR Kobeはこのメーカは日本の神戸港まで運んでくれてこの値段ってことだな。つまり自分で神戸港から当社工場までの物流手配と海上保険が必要か。後関税も払わないといけないね。
Dr. Trade
Dr. Trade
③USD1.7/kg DDP your factory(address***********)ってことは、当社工場まで運んでくれる、保険もつけてくれる、税金も払ってくれるということだから何もしなくて良いね。うん、これ便利だね!

如何でしょうか。どうしても横文字や英語が多いので分かり難いのですが、普段の我々の消費活動と大差はありません。貿易実務はただ『価格と責任範囲』の詳細条件を国境を超えた誰もが共通認識を持てる様に国際間でこうしましょう!とルールを決めたものになります。

それではまた。